出勤時。満員の通勤電車。
高円寺在住のゾ〇ホンさんと、電車で一緒になった。
20年くらい前にどこかの飲み屋で会ったことがあって、ちょっと話して握手をした記憶があるけれども、何の会で何の話をしたのかまるで覚えてない。
それはさておき。
満員電車のドア付近に立つ人は皆、車内に背を向けて、押されながらも我慢して外を見ているのだが、彼は堂々と乗ったそのままドアを背に車内の方を向いていた。
ただでさえ例の民族衣装で目立つ上、当然ほとんどの人たちと目が合う。
時節柄、多くの人たちはマスク着用なのだけれども、彼はしていない。(私もしてないけど)
で。
彼は、ポケットからおしぼりタオルのようなものを出して、思いっきり鼻をかんだ。
皆がそのタオルの行方を目で追う。
真横にいた女子は、マスクの上からでもわかるくらい露骨に嫌な顔をした。
次に彼は、大きな皮の手帳?財布?のようなものを取り出し、鼻をかんだタオルとともに隣の女子越しに網棚の上にそれを置いた。
そのとき電車は揺れて、彼はその下ろす手で私の目の前のポールにつかまり、でもすぐに放した。
その箇所には触りたくないな、と車内の誰しもが思ったであろう。
だけど。
日本にとても長くいて、日本のことはよく知っているはずのこの行動。
絶対、おかしい。絶対、変。
これはドッキリだ! そうに違いない。
これで財布を忘れたふりをしたら、日本人は鼻をかんだタオルとともに掴んで、「ゾ〇ホンさん、忘れ物ですよ」と渡してくれるのかどうか?という人間性クイズかもしれない。
絶対にそうだ。そうでなければ、あんなことするワケない。
野呂圭太はいないとしても、車内のどこかにカメラがあるはずだ。
横の迷惑そうにしている女子は仕込まれているとして、試されているのは場所的に私だ。私の人間性がオンエアされるのだ。
「これ、ドッキリでしょ?」などというのは野暮だし、騙されたふりをするのもシャクだ。ちょっとはウケも狙いたいというスケベ心もある。
どうしようかな、どんなリアクションをとろうかな?
あれこれ考えているうちに四谷。
彼は網棚からタオルと皮財布を取って、民族衣装をひるがえし、さらりと降りて行ってしまった。
え? あれ? あれれ?
人々は何も言わないし、何もしない、という日本人の国民性としてオンエアされるのか?
四谷からあらたに乗車してきた人たちは、そんなことがあったこともつゆ知らず、ポールにつかまり、網棚に荷物を載せた。
ずっと乗っていていきさつを知っている人たちの間で「あっ!」という空気が流れた。
それともこれまでの出来事を教えて差し上げることこそ、人間性クイズのテーマなのか?
ここからがドッキリの本番なのか?
そうこうしているうちにお茶の水。結局、何もできないまま下車。
あの後どうなったのであろうか? 謎のままで、ちょっと悔しい。